青い鳥を多世界解釈に探す旅

Life
文字数:9,701字 | 読了目安: 約13分 | 2026.04.24 | 2026.04.24

「青い鳥」は、幸せになると信じられている青い鳥を探して旅に出たものの連れて帰ることは出来ず、家に帰ったら部屋の鳥かごにいた鳥が青くなっていたという戯曲でした。

モーリス・メーテルリンクの原作では、物語の最後で青い鳥はカゴを抜け出して、どこかへ飛んでいってしまいます。幸せの儚さを考えさせられるお話ですが、現実の青い鳥を探す体験と共通している面もありそうです。

2023年の夏、長年愛されていたTwitterの青い鳥もどこかへ行ってしまいました。青い鳥は、逃げることでしか青い鳥でいられないのかもしれません。SNSに幸せを求めても得られない、という象徴的な出来事にも見えます。

自分の幸せはもちろんですが、幸せの大きな構成要素である人間関係においても、幸せや成功の定義を共有できていないと、より良い人間関係を構築することも出来ません。今回は青い鳥をテーマに、心理学、能力開発、成功法則といった精神世界も概観しつつ、仕事の成功や生活における幸せを考えてみましょう。

本記事が、みなさんの幸せや成功を考える機会になれば、わたしにとっての「幸せ」です。

幸せを探す旅

青い鳥はどこに?

初夏、東南アジアから日本に渡ってくるオオルリは瑠璃色のとても美しい鳥です。まさに、幸せの象徴にふさわしい、出会うことが出来れば、うれしい生きものの一つです。

青い鳥は、外部から何か良いことがやってくるのではないか、良いことが起こるのを受動的に待ってしまうような心理状態を表すときに、青い鳥症候群のような表現として使われることもあります。

何気ない日常に感謝することなく幸せを外部に探していると、日常にある小さな幸せに気付けなくなる・・・。

現実の野鳥と同じように、幸せも籠に入れておくことの出来ないものです。メーテルリンクが青い鳥に象徴させた幸せは、いまここにある小さな喜びを感じることにあるのかもしれません。

日本で見られる青い鳥の代表である「オオルリ」は、初夏、日本に渡ってきます。標高のやや高い山の少し薄暗い森で、渓流沿いに苔などで巣を作って子育てします。

ぼくの住む北杜市でも、姿を見るには生態に関する知識と双眼鏡などの装備に加えて、静かに待つ忍耐力も必要です。繁殖期に渓流沿いを歩けば声を聞くことが出来る可能性は高いですが、姿を見ることは簡単なことではありません。

しかし、自然ガイドや写真家といった経験者であれば、ほぼ確実に見つけることが出来るはずです。幸せや成功も、経験と技術、心がけ次第というところも共通していそうです。

青い鳥の探鳥を参考に、心の統御について考えてみましょう。

青い鳥との出会い方

ちなみに、バードウォッチングを趣味とする人たちの世界で、鳥を見に行く行動を「探鳥」と呼びます。シーズン中は各地で、野鳥ガイドの方が案内してくれる「探鳥会」も開催されています。

探鳥は幸せのつかみ方、心の統御にも通ずるものがあり、次のような3つのステップで考えることができます。

1.動く

まずは、適切な環境を探して動くことが必要です。オオルリの探鳥であれば、生態を知り、渓流沿いの少し暗い森など、生息していそうな場所に行かないことには出会うことも出来ません。

幸せの見つけ方も同じです。自分の求めている理想の働き方や暮らし方をイメージして、少しでも近い環境へと移動することが必要です。仕事でも生活でも恋愛でも、「より良い状況を意図して動く」、「適切な環境に身を置く」ことが最初のステップです。

ネガティブな人間関係に汚染された職場や、やりがいのない仕事を離れ、よりポジティブな人がいる場所、明るいコミュニティに移動するのです。

現在の環境に不平不満が絶えないのであれば、別の環境に移動することも必要です。どれだけ社会が荒廃しようとも、いや、こんな時代だからこそ、新しい生き方を実践している人や同じ想いを持っている人が存在するはずです。

あるいは、現在の環境を受け入れた上で希望となる活動を創り出すことも選択肢の一つです。どのような状況でも、自分の思考と行動で改善出来る可能性はあるはずです。

いずれにしろ、その 選択権 が自分自身にある ことを認識することがもっとも重要です。宗教、スピリチュアル、自己啓発、多様な分野に共通している本質は、自己の意識の覚醒にあります。

収入は住む場所で決まると言われています。あるいは、親しい友人5人で決まるという説もあります。仕事、環境やコミュニティ、パートナーや友人を能動的に選ぶことも重要です。

それ以上に、いまいる環境、会社や友人、人間関係や経済的状況の全ては自分が選択してきた結果だと考えること、自ら責任を引き受ける覚悟 が、新しい未来を切り開く力になります。

身近にいる人や現在の環境は、自分と何らかの縁があって、自分の思考や言動によって、つながってきたものです。上司や親などの誰かを非難したり、社会や政治のせいにし続けていれば、言葉にした通りの現実が繰り返されるだけです。

誰かや何かを批判、非難することにエネルギーを費やしていれば、良いことを生み出すためのエネルギーを失っていることに気付く必要があります。周囲に負のエネルギーを撒き散らしていては、まわりの人にとっても、迷惑でしかありません。

言っている本人にとっても何のメリットもありません。自分では状況を変えることが出来ず、自分がその状況に従うしかないという認識を潜在意識に埋め込んでいることになり、自己肯定感を下げてしまうからです。

コーチングの用語では、理想とするゴールをイメージして、そのゴールを達成するために必要な能力の自己評価 を、セルフエフィカシーと言います。

現在の状況はすべて自分が選んだ結果として、責任を自ら引き受ける覚悟とともに、セルフエフィカシーを高めることが成功や幸せを得る鍵となります。

自分自身を含め、誰のことも批判しない。

その決意の上で自分が望む結果を得るために、必要なアクションを起こすことが最初のステップです。

2.待つ

バードウォッチングや野鳥撮影でありがちな失敗が「待てない」ことです。やたら動き回ったり、欲を出して近づき過ぎれば、鳥は逃げてしまいます。

追いかけると逃げる・・・。

成功や幸せも、野鳥にそっくりですね。対象を直接的に追いすぎれば、逃げて行ってしまいます。

心静かに森の空気を深呼吸して、自然を感じて、ゆったり寛いでいると、野鳥の方から近くに飛んでくることがあります。信頼して待つことが出来ると、必死に追いかけているときには気付かなかった幸せを感じることがあるのに似ています。

最初のステップで、自分の責任で環境を選び、自らの願い、理想、理念を明確にして、実現を目指して何らかのアクションを起こしていることが鍵です。自分で選んだ環境、自ら納得出来るだけの努力をしているなら、信頼して待つことも必要です。

待つことが出来ず、いつも不平不満ばかり言って外部環境のせいにしていれば、さらに悪い状況を呼び込んでしまうことになります。些細なことでもいまある状況の好ましいことに着目して感謝していれば、良い循環が生まれます。

どのような状況でも、自発的に笑っていれば少しは楽しい気分になってくるものです。意識的に笑顔でいれば、より幸せを感じるようになることは、心理学的な実験でも実証されているようです。経験的にも、いつも機嫌が良く元気な人には良いことが起きているように見えます。

長年にわたり高額納税者になられて、成功した商人として知られる斉藤一人さんも、成功の基本として、毎日を機嫌良く暮らすことを挙げておられますね。

3.感じる

過去に青い鳥を見たことがあれば、そのイメージを思いだして強く感じるようにします。見たことがない、経験がない場合でも、写真や映像などからイメージすることは可能です。そして、そのイメージを増幅するように感じます。

そういう状態でいると、枝葉に隠れて見つけにくかった姿、遠くで微かに聞こえる鳴き声など、五感が研ぎ澄まされていきます。いまの環境で飛んでくるとすると、どの枝に止まるか、そこにどの程度とどまるか、いろいろな心象も起ります。

スピリチュアルに解釈すれば「願えば叶う」とも言えますが、少なくとも多様な状況を詳細までイメージしておくことでチャンスを逃しにくくなることは確かです。

願望実現の方法や成功法則においても、望みが叶った状態の感情を積極的に感じるようにすることが勧められています。

日本古来の習慣でも「予祝」と言って、予めお祝いする、喜びを感じる、感謝することで願いが叶うと言われています。

わたしのお勧めする考え方は、こうした教えをあまり神秘的、信仰的に捉えるのではなく、自分の望み、願いが叶った状態を臨場感高く感じることで、実現に必要なアイデアや道筋が見えてくる、心理的な仕組みとして解釈することです。

イメージトレーニング、ビジョンリハーサルなど、いろいろな呼び方がありますが、スポーツ、芸術、ビジネスといった多くの分野で、この感覚を掴むことが出来た人は願いをかなえ、成功していることが多いようです。

以前に本ブログで紹介したユキヒョウの映画ベルベットクイーンでも、映画監督は同じようなことを言っていました。

彼らは、環境を綿密に調査して観察するとともに、対象となるユキヒョウのイメージを心に描き、適切な準備を整え、祈りにも似た信頼感を持って待ち続けます。映画ではチベットでの撮影スケジュールの最終段階でユキヒョウが現れ、奇跡的に撮影が成功していました。

人事を尽くして天命を待つ

古典にある通り、「人事を尽くして天命を待つ」ということでもあります。人事を尽くすことも大切ですし、待つことも必要というところに宇宙の妙味があります。自己を過信して思い上がり、強引に何でも自分の思う通りにしようとすれば、対象となる成果は逃げていってしまいます。

例えば、先に紹介した映画の撮影でも、金と力にものを言わせてヘリコプターでユキヒョウの動向を追えば、撮影は簡単だったかもしれません。しかし、そういった直接的に成果を獲得しようとする、品性に欠ける創作活動をしてしまえば、映画を見た人に感動を与える作品にはならなかったでしょう。

野鳥撮影においても、餌付けによる誘導や、絵になるように自然環境を改変するなど、人為的な行為により、創作活動の本質を損なってしまうカメラマンも少なくありません。

自己の責任で意識的に行動して努力を積み重ねた上で、結果は天の采配に任せる、自然に委ねる、おおらかさも必要です。創造性、クリエイティブの世界にも共通するコツの一つです。

古来、多くの発明家や芸術家、クリエイターが、「情報をインプットして、ひたすら考え尽くした後、忘れた頃に閃き、天啓という形でアイデアや解決策が一瞬にして降りてきた」、という表現をしています。99%の努力と1%の閃きという表現もありますね。

能力開発から宗教まで共通するもの

クリエイティブの世界で有名な「アイデアのつくり方」のジェームズ・W・ヤング氏、創造性開発のNM法で知られる創造工学の中山正和氏らにも共通している要諦は、大量の情報をインプットして、意識的に最善の努力をした後は、一度、「忘れる、委ねる、待つ」フェーズが入ることです。

わたしも仕事では徹底的に調べる方ですし、多様なパターンを考え尽くしますが、考えてもわからなくなったり、行き詰まったときは、家庭菜園で土に触れたり、日帰り温泉に行くなど、モードを切り替えています。いったん課題を忘れてリラックスしたり、他のことに没頭した方が、アイデアや解決策を閃くことが多いからです。

そうした経験を何度かしているうちに、集中・論理思考モードと発散・イメージ思考モードの切り替え方のコツもわかってきます。

そして、中山正和氏の著作を読んでいると、創造力も工学的に活用出来ることがわかります。集中と発散、左脳と右脳、論理とイメージのモードを切り替えることが閃きを呼びます。

クリエィティブの世界は、才能や天性で語られることが多いものですが、実は天才と呼ばれるような人たちもその活動をひもといてみれば、大量のインプットとアウトプット、失敗にもめげず何度も挑戦する情熱、必ずやり遂げると信じるセルフエフィカシー、楽観的性質にささえられていることがわかります。

この感覚は、人材教育や能力開発にも通ずる重要なポイントです。今後、社会のデジタル化が進むにつれ、定型的な仕事、属人性を排除した仕事は、デジタル技術に代替されるようになっていきます。

デジタル化が進むことで、企業も個人も 創造力・クリエイティブ 、アナログ的なものが競争力の鍵を握ることになります。行き過ぎた大量生産時代の管理主義、形式型管理の弊害が大きくなり、創造力を育む 醸成型管理 が重要になっていくことでしょう。

引き寄せの法則

創造性が重要な時代になると、直接的な意味での努力、目標達成への強固な意思とともに、受容性・おおらかさのバランスが必要になります。

引き寄せの法則で有名になったロンダ・バーンのザ・シークレットでは、1)願う、2)信じる、3)受け取るというステップで表現されています。結果を信頼する意識と、結果に執着せず、手放す感覚が両立することで、閃きや喜びを受け取ることが出来るという考え方です。

ロンダ・バーンに影響を与えたネヴィル・ゴダードの「At your command (世界はどうしたってあなたの意のまま)」が言っていることは、聖書を絶対積極の精神で解釈したものと捉えることができ、ヨガや禅とも共通しています。

あるヨギの自叙伝で知られるパラマハンサ・ヨガナンダも、日本にヨガの精神を伝えた中村天風も、基本的に言っていることはみな同じです。共通しているのは、自己の意識、潜在意識が自己の認識する世界に影響を与えている、ということです。

ヨガナンダや中村天風、ヨガや瞑想、能力開発や創造性開発については、別の記事でも詳しく紹介します。古来、先達の教えとして、外部環境や人間関係、社会でさえ、わたしたち一人一人の意識の影響下にあるということが語り継がれています。

情報空間から物理空間へ

物質の波動性と粒子性における観測問題に見られるように、現代科学においても意識の不思議さを無視出来ない時代となりました。人類は人間の内面、意識と精神に向き合うことが求められています。

ここで、量子力学の多世界解釈に触れておきましょう。ヒュー・エヴェレットが1957年に提唱したこの解釈は、量子系が観測されるたびに宇宙が分岐し、あらゆる可能性が別々の世界で同時に実現しているとする考え方です。

SFや都市伝説のネタに使われがちですが、多世界解釈は物理学者ブライアン・グリーンら第一線の研究者が真剣に議論している、現代物理学の正統な解釈候補の一つです。コペンハーゲン解釈のような「観測による波束の収縮」という不可解な現象を持ち込まずに量子力学を解釈できるため、むしろシンプルだと支持する物理学者も少なくありません。

「青い鳥がいる世界」も「いない世界」も、ともに存在しているのだとすれば、わたしたちの意識がどちらの世界を選び取るかという問いが、物理学と精神性の交差点に立ち上がってきます。

この交差点をもう少し広げて眺めてみましょう。相対論と量子論以前は、物理的な時空間が絶対的な存在として考えられていました。しかし現代物理学では、観測問題やホログラフィック原理など、意識や情報の位置づけをめぐる議論が深まっています。

現代の物理学者や認知科学者によっては、多次元の情報空間の写像、投影が3次元の物理空間に表象する、という解釈も提起されています。ここでいう情報空間は、現代物理学が扱う厳密な意味での情報よりも広く、わたしたちの精神、意識に起こる心象、イメージ、情動までを含む概念として考えます。

つまり、物理空間が先にあるのではなく、情報空間では潜在意識を介して情報は遍く重畳されており、先に情報空間で起きた現象が、意識を持つ生物を介して物理空間に現れてくる、という解釈です。わたしも、科学的にも精神的にもこの解釈を支持しています。

幸せの定義

心の中が喜びでいっぱいになり、幸せを感じて感謝していれば、喜びや幸せの周波数を発振することになり、同じ波動を持つ人や現象を引き寄せて、より幸せを感じる現象が物理的にも起こるというのが、宗教やスピリチュアルで語られてきたことであり、現代物理学や心理学にも通ずる結論です。

幸せの定義は人それぞれですが、現代の心理療法、宗教やスピリチュアル系で語られていることに通ずる要諦は、驚くほどシンプルな二つの態度に集約されています。一つは、自分自身を含め、誰のことも批判しないこと。もう一つは、自分が幸せだと感じていればそれが幸せだ、ということです。

前者は人間関係と自己肯定感の土台であり、後者は外部条件に依存しない幸福の定義そのものです。

自分が幸せだと感じていれば幸せ

というところに集約されています。

現状との差異をうめるもの

一方で、幸せの感じ方を言葉で言うのは簡単ですが、現実社会では不満や不安がつきないことも事実です。心を先に、幸せ、喜びで満たすことが難しい時代になったとも言えます。

1960年代、昭和の高度経済成長期に「幸せなら手を叩こう!」と唱う歌謡曲が一世を風靡したことがありました。当時の日本は、今より不便なことも厳しいこともたくさんありましたが、みなで手を叩いて唄っていれば幸せな気分になれる、おおらかな社会があり、日本全体が活気に満ちていました。

しかし、平成、令和と続く、失われた30年とも言われる経済的停滞期を経て、日本人の幸せも単純ではなくなりました。物質的には豊かさを享受する一方で、精神的な幸福感、自己肯定感は低迷するばかりで、先進国の中でも最低レベルになってしまいました。

首都圏では心療内科・メンタルクリニックを見かける機会が増えました。貧困や格差の拡大、精神の荒廃は日本社会にとって大きな課題として重くのしかかっています。

青い鳥はどこに

現代人は次から次へと気づく間もなく新しい欲望を埋め込まれ、金融資本主義や全体主義に都合の良い価値観を教育され、幸せの定義を奪われてしまいました。

令和の時代、グローバリズム=商業主義と全体主義の暴走はとどまることを知らず、皮相的、即物的な欲望を刺激されるばかりで、人間本来の幸せを分け与えてくれる社会も政治家も宗教家も、どこかへ行ってしまいました。もはや外部に青い鳥を探すことは出来ません。

わたしたち一人一人の意識の内面に存在する青い鳥に気づき、育くむことが大切です。

内面を探求する

青い鳥が象徴する幸せは、個人の心の中で、日々の生活の中で、感じ取り、自ら育成していくものです。心身の健康を保つ上で、自ら心と体をケアする瞑想やヨガのような習慣を持つことが重要な時代になったとも言えます。

特定の宗教を信仰しているなら、祈りの時間を持つことでも読経でも良いと思います。手法は自分に合うものを選べば良いわけですが、いずれにしろ、外部の何か、神や司祭や牧師や僧侶を頼るのではなく、壺やら神秘の石に救いを求めるでもなく、医師や医療や化学物質に依存することでもなく、心身の健康に自分自身で主体的に向き合う意識が重要です。

幸せが不足しているからといって、精神が不安だからといって、心療内科を訪れても、青い鳥を連れて帰ることは出来ません。外部から直接、セロトニンやノルアドレナリンなどを操作する化学物質を処方してしまえば、脳内のホルモンバランスを崩し、依存サイクルの泥沼にはまりこんでしまいます。

旅と冒険、成長と幸せ

こうしたテーマは、脳生理学的に脳内物質の旅として解釈することもできます。何かをやりたいと思うことで報酬系ホルモンのドーパミンが分泌されて、未知なる世界へと旅する勇気と原動力が生み出されます。目標に近づくとアドレナリンが出て心身ともに興奮することで、ここぞというときの行動を促すエネルギーになります。

目標に向かって情熱を持って取り組んでいるときは、βエンドルフィンが苦痛をやわらげ、いわゆるハイになる状態を作り出します。ゴールを達成するとセロトニンが出て、落ち着き、成功の余韻とともに静かな達成感が得られます。旅から戻り安心して家族と触れ合うことで、オキシトシンが出て静かに幸福感を味わうことが出来ます。

幸福を脳科学・ホルモンの作用として論じるのは無粋ではありますが、不幸だから、憂鬱だからと言って、うつ病と診断されて化学物質を処方される現代社会では、幸せの仕組みを脳科学から理解しておくことの意義は十分にあるはずです。

セロトニン、オキシトシン、ドーパミンは、幸せホルモンとして紹介される機会も増えてきましたが、自然なサイクルがあってこその作用です。SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)のように、セロトニンを直接的に増やそうとして化学物質を処方されれば、別の問題を呼び込んでしまうはずです。

化学物質の医療に頼らずとも、自然が用意してくれた精妙な仕組みが、心を成長させ、心身の健康を増進してくれることを忘れてはいけません。

日々の生活を重視した精神性

禅は、形式的な儀式や浮ついた神秘体験を戒め、地に足の付いた日々の暮らしを重視しています。禅が、十牛図で伝えている旅も精神性に共通する概念です。十牛図には、悟り(牛)を得るため旅に出て、牛を見つけ、捕まえた牛を連れて返り、一緒に暮らした後、牛の存在も忘れ、普通に暮らすまでが描かれています。

悟りを得るという目的を持ち、自律的に探求、行動した後、日常を大切に暮らす。青い鳥も十牛図も、人間の精神性における普遍的なテーマを描いています。

何かをやりたい、欲しいと思うことで、少しだけ難しいことや行動が必要な目標にチャレンジする。願望〜行動〜達成〜幸福のサイクルを自分の力で回すことが心身の健康を保つ秘訣です。

綺麗な景色を見に行くでも、憧れている人に会いに行くでも、何か新しいことを学ぶでも、何でも良いのです。

小さな願望、小さな行動、小さな達成、小さな幸せ・・・、どんなに些細なことでも良いので、自律的にこのサイクルを意識して行動すれば、脳内物質の分泌サイクルが活性化されて、心身ともに健康になっていくはずです。

青い鳥をテーマに、幸せについて考えてみましたが、みなさんの青い鳥は見つかりましたか。青い鳥にも多くの種類があるように、幸せの形態も人それぞれです。幸せの青い鳥を見つける旅路に、本記事が参考になれば幸いです。

関連情報

青い鳥

いもとようこさんの柔らかなタッチの絵は、見ているだけでオキシトシンが出てきそうな素敵な絵本です。こういう絵本を親子で楽しむ時間こそ、人間にとっての幸せなのかもしれません。

モーリス・メーテルリンクの原作はKindle Unlimitedで読むことができます。わたしは、戯曲という芸術分野もよく知らず、演劇も見たことありませんが、ストーリーはもちろん、光や水、ブナやモミの木などの抽象化された存在の表現、場面転換や衣裳、語り口調について書かれている指示など、興味深い作品でした。

メーテルリンクは青い鳥が有名ですが、貧者の宝、花の知性などのエッセイからも、自然や人間性への深い洞察が感じられます。別の記事でも取り上げたいと思います。

パワー

ザ・シークレットは、続編のパワーなどとも併せて引き寄せの法則として一大ブームを引き起こしました。著者のロンダ・バーンが伝えたエッセンスは、古来、時代の変遷に呼応する形で多様な形で語り継がれてきた幸せと成功の法則です。

古代エジプト時代のヘルメス神秘主義まで通ずるもので、人間の精神に共通する普遍的な原則と言えます。一方で、引き寄せの法則を、夢見る少女や青い鳥症候群、万能感あふれる中二病と区別のつかない捉え方をしてしまう人もいて、評価が分かれる面もあります。

精神世界を書物で理解するには、抽象的過ぎたり、暗喩が難解だったりして、読み手の側に一定の知識量と思考量、情報空間における臨場感が必要になります。本来、目に見えない世界の概念は、口伝であり、密教的な体系で伝えられてきたものです。

書物としての限界はありますが、パワーは良くまとめられており、前提知識を持たずに読んでも、シンプルでわかりやすいので、お勧めです。

エレガントな宇宙

テレビ番組でブライアン・グリーン氏が解説する姿を見て、物理学の最先端が持つ知的興奮に魅了された方も多いのではないでしょうか。わたしもその一人です。本書はひも理論を中心に、相対論と量子論を統一しようとする現代物理学の挑戦を、数式を使わずに語り尽くした名著です。

多世界解釈や多次元宇宙といった、SFのような響きを持つ概念が、いかに真摯な物理学の議論として展開されているか——その現場の空気を感じることができます。スピリチュアルな文脈で語られがちな「並行世界」や「次元」の話を、もう一段深い解像度で捉え直すための絶好のガイドです。

野鳥の鳴き声図鑑

わたしが野鳥に目覚めたのは、2009年にオオルリが我が家の軒先で営巣したことがきっかけでした。約2週間、間近でオオルリの子育てを見ることが出来て、瑠璃色の美しさはもちろん、少し哀愁を感じる繊細な鳴き声にもすっかり魅了されてしまいました。

そして、何よりも朝の4時から日が暮れるまで、雛に与える餌を健気に運び続ける親鳥の姿に感動しました。雛に語りかけるように鳴き、向けられた眼差しには、人間と変わらない、子を想う気持ちが感じられます。

それ以来、野にいる鳥を見る度、元気に巣立ってくれたか、今年は十分に餌資源があるかなど、野鳥の暮らしや生態が気になるようになりました。

もっと野鳥のことを知りたいと思って作ったアプリが野鳥の鳴き声図鑑です。野鳥の鳴き声の収録をライフワークにされている上田秀雄さん、野鳥写真家の叶内拓哉さん、自然や生き物専門の出版社である文一総合出版さんの協力をいただいて開発しました。

日本でよく見られる野鳥250種の鳴き声、写真、解説が収録されています。インターネットに無料のコンテンツが増えたこともあり、期待していたほどのビジネスには至りませんでしたが、オフライン環境でも使えることや検索性の良さ、二カ国語対応などを評価いただき、2010年の発売以来、多くのユーザーの方に利用いただいています。

野鳥を見つける上で、鳴き声を覚えておくことは重要なスキルの一つです。また、聴覚を能動的に使う機会が少ない現代社会では、鳴き声を聞いて3次元空間上でマッピングして、鳥を探すような使い方をすることで脳が活性化されます。

わたし自身、ストレスの大きいIT業界で30年近く、精神を病むことなく働いて来れたのも自然豊かな八ヶ岳南麓で多様な生きものに囲まれ、野鳥の声を聞き、土に触れる暮らしができていたおかげだと思っています。

繰り返しになりますが、精神的に辛い、心のバランスが崩れたと感じたら、化学物質に頼るのではなく、自然豊かな森林に行き、野鳥の鳴き声を聞く方がよほど心身の健康を回復出来るはずです。

オオルリのグッズ

わたしは都会の下町育ちで、自然や生きものには縁のない人生を歩んできましたが、野鳥のことや自然や環境のことについて知るにつれて、自然や生きものをますます好きになっていきました。わたしが住む北杜市には日本で唯一の動物画専門の美術館、薮内正幸美術館があります。

薮内正幸さんの描く生きものは生き生きとしてとても魅力的で、グッズになったら素敵だな、iPhoneケースとして持ちたいな、などと思ってグッズ制作のビジネスを始めました。2010年にクリアファイルの制作から始め、現在は400アイテム以上を制作しています。

いきもの細密画アートグッズとして、生きもの・自然系のイベント、マルシェやポップアップストア、ネット通販など、多様な機会を通じて販売しています。グッズの方も小さなビジネスで利益も出にくいのですが、自分たちが好きな分野ですし、生きものや自然が好きな方にはとても喜んでいただいているので、大切に育てています。グッズがもっと広く、多くの人に自然や生きものに関心を持ってもらうきっかけになればと考えています。

青い鳥たち

青い鳥の代表としてオオルリを紹介しましたが、日本で見られる青い鳥はオオルリだけではありません。

コルリはオオルリに比べると少しマットな感じの青色が可愛い野鳥です。ルリビタキは、お腹のオレンジから青のグラデーションがお洒落です。

いきもの細密画アートグッズ クリアファイル オオルリ コルリ ルリビタキ

カワセミ

カワセミも一度、実物を見ると魅了される生きものです。翡翠のような緑と青が複雑に輝き、光の当たり方でも多彩に変化する色のグラデーションが美しい野鳥です。実物は写真の印象よりかなり小さいので双眼鏡は必須ですが、獲物との距離を測ってちょこまかと首を動かす仕草のかわいらしさもあって、いくら見ていても飽きない青い鳥です。

オナガ

カラスの仲間で地味な印象の野鳥ですが、オナガの青も印象に残る魅力的な青色です。

・・・ということで、青い鳥から心身の健康と幸せまで、いろいろと考えてきました。厳しい自然の中で、たくましく生きる野生動物を見ていると、人間界の些細ないざこざなど、気にならなくなるものです。野生動物を見習って、逞しく生きていきましょう!

健康管理については、過去にもいくつかの記事を書いていますので、ご参考まで。